前の記事でもちらっと書きましたが、先日の喫茶店でのお供は「無国籍の情景 -国際法の視座、日本の課題」でした。
そもそも無国籍者って何?っていうところからなのですが、国際法における最も一般的な無国籍の定義は、1954年の「無国籍者の地位に関する条約」(無国籍者条約)第1条1項によると、「『無国籍者』とは、その国の法律の適用によりいずれの国によっても国民と認められないものをいう」と簡明に記されています。
人は、出生の時点において、出生地国または父、母の国籍国の法令(憲法、国籍法、行政命令など)の適用により、自動的にその国の国民と認められるのが原則ですが、人は出生の時点で無国籍になる場合もあれば、出生後に国籍を失うこともあります。しかしなぜ無国籍者を生み出してしまうのか、UNHCRは無国籍者を生み出す代表的な要因を10項に分けて紹介しています。
- 国籍法の抵触
- 領域の移転
- 婚姻関連法令
- 行政実務
- 差別
- 出生登録に関する法令
- 血統主義
- 国籍剥奪
- 国籍離脱
- 法令の適用による自動喪失
先程書いた、「出生時の無国籍」ですが、出生による国籍の取得は大きく分けると生地主義と血統主義という2つの方式があります。
- 生地主義:父母の国籍に関わらず子に出生国の国籍を付与する
- 血統主義:出生国に関わらず子に親と同じ国籍を付与する
いずれの方式を採用するのかは各国の裁量にゆだねられています。(生地主義はアメリカなどで採用されており、血統主義は日本やドイツなどで採用されています)
しかし、結果として、たとえば血統主義国の領域で、生地主義国の国民を親として生まれた子はどの国の国籍を持つことになる・・・?ということです。
日本はかつて父系優先血統主義という、ざっくりいうと「子にはパパの有する国籍を与えますよ」という方式でしたのでパパが日本国籍を有していなければ、子には日本国籍を与えられませんでした。たとえばフジコ・ヘミングの場合、父がロシア系スウェーデン人で、母が日本人。ドイツで1932年に出生しましたが、日本は父系優先血統主義国であったため、長らく無国籍状態が続きました。
1985年にこの父系優先血統主義は改正され、父系母系どちらの国籍を選べるようになりました。これを父母両系血統主義と呼ぶことがあります。
長々と書いてしまいましたが、時々こんな話も悪くないなあなんて思います。また今度この話の続きを書くことにします。
99%の無駄を省いて1%に集中することを目標としていますが、まだまだ程遠い事務員です。趣味は断捨離と読書。