先日、本家サイトの側で過去5年ほどの修復カルテをもとにSDカードやUSBメモリのメーカー別に壊れやすさや復元しやすさが異なるか集計してみた記事を掲載したわけなのですが、皆様の予想通りではないかと言うくらいみごとにメーカー別の優劣が数値として現れていました。
もっとも、しつこいくらいに書いてますが世の中に出回っている数が多ければ多いほどうちの会社に寄せられる復元依頼は多くなるわけです。そしてどんなメーカーのものでも品質が均一化されているとすれば、絶対数が多くなればなるほどいろんな症状のものが平均化されていくはずなのですよね。
ですが実際に預かる機会の多いメーカー上位数社で比べてみると症状や復元率に偏りが出てくるわけで、これは現場でも肌感覚として「あっ、このメーカーのSDだと下手な下調べをしたら危険だから先にこの手法で取り組まないといけないかな」などというモノと概ね一致してきます。
※余談ですがこの下調べでWindowsパソコンにつっこんじゃう大手復元業者さんがいらっしゃいまして、そのタイミングでSDカードに上書きされたSystem Volme Infomationの値が残ったまま弊社に転送されてくるなんて事例がわりとあります。ドコとは申しませんが仮にも復元事業者が知らないはずは無いと思うのですが。
■販売メーカーは数多くあれど
有名どころとしてはSanDiskを筆頭に、TOSHIBA(現 KIOXIA)、Transcend、ELECOM、BUFFALO、I/Oデータは少なくとも日本国内ではよく見かけるメーカーですね。
そしてそれに続く感じでSONY、Verbatim、Kingston、Gigastone、SAMSUNG、SiliconPower(SP)あたりが量販店で入手しやすいメーカーでしょうか。ネット通販を漁ればもっともっと馴染みのないメーカーのものも多く存在しますし簡単に入手できてしまいます。
電子部品業界に詳しい方ならば実際にフラッシュメモリを製造しているメーカーは数社にすぎず、数多くある販売メーカーは製造メーカーから中身を購入してパッケージングしているとご存じかとは思います。しかしたとえ製造するメーカーが数社であっても納入先の要求にあわせた価格と合致する品質基準が存在するので、スペックが同じでも厳密に中身が同じということはありません。
そしてその違いが最終的にメーカー別の品質、いわゆる壊れやすさやその症状の偏りとなって表れてくるのではないかと予想できます。
■極論すれば「運」ですが
どんなに信頼性の高いメーカーだろうが、どんなに聞いたことないメーカーであろうが、利用者個人としては不具合にあうかどうか(=初期不良品や潜在的不良品にあうか)は運しだい。
100%大丈夫なんてことはどんな高信頼メーカーでもあり得ないわけです。
とは言え、100個中1個の不良品が混ざっている棚から商品を取りたいか、100個中50個の不良品が混ざっている棚から商品を取りたいか、という違いにはなってきますから、ご自身の運にぜったいの自信があればどちらから選んでも良いですがそんな強靭な運ならもっと他のことに使いたいですよね。
ですので購入する際にはどこのものを買うか(メーカーの選別)、どこから買うか(販売店の選別)、いくらで買うか(激安処分品でないものを選別)というのは大切だと思うわけです。
※とはいえ、ウチは商売あがったりな状態になっちゃいますがね…
■こまめなバックアップコピーは必須
前段でも書きましたが、どんなに信頼性に期待できるメーカーの製品であっても壊れる時は壊れるもの。さらには使えば使うほど操作ミスや機材アクシデントで内容が化けてしまうなんてこともあるのがSDカードの世界。
ですからバックアップコピーはこまめに取っておいた方が良いのは言うまでもありません。
このバックアップコピーですが、特に難しいアプリケーションや操作方法を指す言葉ではなくて、単純にほかの記録媒体にコピーしておくだけです。
むしろ気をつけないといけないのは「コピー」のつもりで「移動」操作をしてしまうことです。この「移動」は以前はカット&ペースト(=切り取り&貼り付け)と表現されていたように移動元のデータを削除してしまう操作になります。
最終的にはコピーが取れたらSDカード内は空っぽにしたいという意図の方も多いと思いますが、意外にも「移動」操作はトラブルの温床であって、ちゃんと移動が完了しないままプロセスが完了したように振る舞ってしまうことがしばしば。
こうなると、コピーしたはずの媒体には正常にコピーできていなくて、なおかつ移動元も自動的に消えてしまっているのでお手上げということになってしまったご依頼が後を絶えません。
ほんのひと手間を惜しまず、コピーが完了したことを確認してから元を削除しましょう。
■復元ソフトが破壊を進めることも
ここからは余談ですが、SDカードなどが壊れたらできれば「自分で」「安価に」直したいという方は多いですよね?
ところが復元事業者として日々いろんな状態のメモリ状態を見ていると、復元ソフトを試したがゆえに復元できなくなっているものも目の当たりにするわけなのです。
ある程度以上パソコンなどでのストレージ操作に精通されている方であれば「ソース」「デスティネーション」と聞いても自然と対象を判断できるのですが、そうでない方だとたとえ普段のパソコン操作に慣れていたとしても聞き馴染みがない言葉ですよね。
ところがこれ、実は検査対象と保存先を表すとても重要なシーンで使われている場合が多くて、指定を間違えると無意味なデータで復元したい対象メモリを盛大に上書きしてしまいます。
そのほかにも、WindowsだとCドライブとかDドライブとかいった言葉でストレージを区別しますが、これもWindowsという狭い世界に限定された話。いくつもつながっているストレージ(=ドライブ)を区別する言葉はたとえば/dev/sdaなんて感じで表されるほうが多いですし、/physicaldevice〜〜とかいった表示で判別するひともいるかもしれませんが、これらも同様に指定を間違えると取り返しがつかない状況にあっという間に陥ります。
■さらには利用者の誤解による上書きも少なくない
そしてさらに最近増えている質問が「フォーマットをしてマウントできるようにすれば復元しやすくなる?」という恐ろしい誤解。そりゃ「フォーマットが必要です」なんていきなり表示されたらフォーマットしたくもなりますわな。
それに、たしかに一部の能力が低いソフトではOS管理下で動作するように組まれているのでマウントできないとそもそも動作できない事からこういった誤解が生まれてくるのかと予想します。しかしそもそもOS管理下で動作するということはそれだけOSの影響を受けてしまうわけですから純粋に高精度の復元など期待できません。
復元できないだけならまだしも復元ソフトには外部計測値や経験則などが反映されず単純にプログラムされた通りにしか動作しないわけですから、物理不良領域が含まれているものにもドカドカと土足でアクセスしようと踏み込んでしまいます。これが致命的に物理不良を進めてしまう原因になることもしばしば。
ほんとにメモリにダメージを与えずに安全に復元しようとするならば、外部から応答速度やその波形など逐一反応を計測しながら慎重に行わないといけないのですが、それはソフトだけでは困難でハードウェアとの組み合わせは必須になってきます。
■上書きは確実に復元不可能な領域を拡げます
動画データ満載のようなシビアコンディションでない限り少しの上書きでは復元率はさほど低下しません。が、しかし、それを繰り返せば繰り返すほど確実に復元できたはずのメモリ領域をかきまわしてしまうこととなり、そのあとでいかなる機材を用いようがフラッシュメモリである以上は復元できなくなる割合がどんどん拡大し続けます。
余談が3ブロックとずいぶんと長くなってしまいましたが、より安全なデータ復元のためにはぜひわたくし共にご用命いただければと考えます。
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消えちゃった動画や写真データの復元は
安心安全な『株式会社パソコントラブル救助隊』へ。
https://hqsecure.net/
株式会社パソコントラブル救助隊で公式サイトを含めたウェブマスターを兼任しています。
趣味はカメラとぶらり散歩。フォトマスターは2級。日々感じたことを忘れないうちに雑記帳に書いています。