USBメモリが壊れる前兆

職業がら、すでに壊れてしまった状態のUSBメモリやSDカード類を拝見することは非常に多いのですが、それと同時によくご相談いただくのが

SDカードやUSBメモリが「壊れる前兆」はどんな様子なのか?という内容。

正直言って、そんなものが本当に察知できるならば予防動作や緊急退避的な動作も機械的に実現できるのですが、現実には難易度が高く、おかしいな?と感じたときにはすでにかなり壊れてしまっているのがメモリストレージ類の特徴でもあります。

USBメモリやSDカード

■あえて前兆と言える現象

冒頭で、壊れ始めていることを実感した時にはすでにかなり壊れてしまっていると書きました。

ですがあえて経験則のなかで「使い続けると酷い状態になりそうだな」と感じる直前の症状を前兆と緩く定義するのであれば以下のようなことが挙げられます。

  • PCに接続したときの反応がいつもより遅く感じる※1
  • ファイル名やフォルダ名が文字化けしてる
  • フォルダを開こうとしたら遅い※2
  • フォルダのはずがファイルアイコンに変わってる
  • ファイルを開こうとしたらウィンドウが閉じる
  • ファイルを開こうとしたら固まる
  • ファイルを開くとPCが落ちる
  • 写真を開くと画像が崩れたりベタ塗りになっている
  • 動画を開くとノイズが多かったり再生できない
  • ファイルパスが見つからないとエラーが出る

ざっと思い当たるだけでもたくさんの症状があります。

■反応がいつもより遅い

そのなかで※1※2の「遅い」ですがご利用者さんの普段お使いの環境で”いつもより遅い”と感じるほどの差があるかどうかがポイントになります。

あえて数字で表現しようとすれば「5〜10秒を超えるほど」遅ければ確実に異常が発生していると予想できますので、そのままずっと繋ぎ続けることは避けたほうが安全です。

時計イメージ

応答が遅いということはUSBメモリやSDカードの内部でなんらかの物理破損が原因で応答遅延が生じている可能性が高いため、通電をつづけたり過度なアクセスを続けると急激な状態悪化を招き復元不可能な状態に至ることも考えられます。

できるだけ速やかにパソコンなどの機器から取り外しておくことが大切です

■アクセスすると異常動作

そのほかの症状でも、特定の領域に記録されているファイルを操作しようとしたとたんに固まったり、ウィンドウが閉じるなどの異常動作をする、といった様子であればメモリからの応答に異常があることでOSの動作が想定外の動きとなっていると考えられます。

この場合も、破損しているメモリ領域にアクセスを続けると確実に悪化しますから取り外しておきましょう

■文字化けやノイズ発生

破損により写真データがグレーに

ファイル名やフォルダが化けたり、またはファイルの中身が壊れて正常に表示できない(またはノイズだらけ)といった症状も単純にソフト的な誤動作ではなく、正常にデータを保持できていないメモリが存在していることを表します。

破損によりファイル名などが文字化け

この不具合そのものがデータを格納している領域に発生すれば、写真や動画などのファイルが正常に表示できなくなったり、はたまたファイルを管理している領域に発生すれば、ファイル名などが化けたり消えたりフォーマットを促されたりといった現象になります。

破損によりフォーマットを促される

これもすでに正常に読み取れないメモリ領域が発生しているため(すでに記録してある情報が消失していたりすることから)、何度もしつこくアクセスを続けるようなことは避けるほうが賢明です。

しかし私を含むアナログ世代の方々はつい”接触不良かなにかじゃないか”と考えてしまいがち。そしてなんども接続・取り外しを繰り返したり、SDカードの場合には接点をこすったりといった対処をしてしまいがちです。

ですがそんなアナログ時代の対処方法をSDカードやUSBメモリのようなデジタル機器に適用すると大抵の場合には逆効果になりますので、できる限り接点には触れないようにご注意ください

■メモリイメージを取得しょうとしたら完全に壊れる

蛇足ですが、当社内の実験環境でもカード破損を発生させるために過酷な条件でのテストを実施しております。

その一環でメモリ破損の症状が現れたSDカードに対し、状態を記録するためにメモリイメージを取得しようと操作すると特定の領域をリードした途端にカード全体の応答が無くなってしまったという事例が複数回観測されています。

そのため内部メモリ状態によっては値を取得しようとしただけでも致命的な状態へと悪化させてしまう場合もあるのでくれぐれもご注意ください(一般的に復元ソフトなどでサルベージ作業を実施すると間違いなく不具合メモリ領域を踏むことになり、復元できたはずの領域にまでとどめを刺すことになります


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SDカードメーカー別の壊れやすさと復元率

先日、本家サイトの側で過去5年ほどの修復カルテをもとにSDカードやUSBメモリのメーカー別に壊れやすさや復元しやすさが異なるか集計してみた記事を掲載したわけなのですが、皆様の予想通りではないかと言うくらいみごとにメーカー別の優劣が数値として現れていました。

メーカー別の症状と復元率のグラフ

もっとも、しつこいくらいに書いてますが世の中に出回っている数が多ければ多いほどうちの会社に寄せられる復元依頼は多くなるわけです。そしてどんなメーカーのものでも品質が均一化されているとすれば、絶対数が多くなればなるほどいろんな症状のものが平均化されていくはずなのですよね。

ですが実際に預かる機会の多いメーカー上位数社で比べてみると症状や復元率に偏りが出てくるわけで、これは現場でも肌感覚として「あっ、このメーカーのSDだと下手な下調べをしたら危険だから先にこの手法で取り組まないといけないかな」などというモノと概ね一致してきます。

※余談ですがこの下調べでWindowsパソコンにつっこんじゃう大手復元業者さんがいらっしゃいまして、そのタイミングでSDカードに上書きされたSystem Volme Infomationの値が残ったまま弊社に転送されてくるなんて事例がわりとあります。ドコとは申しませんが仮にも復元事業者が知らないはずは無いと思うのですが。

■販売メーカーは数多くあれど

有名どころとしてはSanDiskを筆頭に、TOSHIBA(現 KIOXIA)TranscendELECOMBUFFALOI/Oデータは少なくとも日本国内ではよく見かけるメーカーですね。

そしてそれに続く感じでSONYVerbatimKingstonGigastoneSAMSUNGSiliconPower(SP)あたりが量販店で入手しやすいメーカーでしょうか。ネット通販を漁ればもっともっと馴染みのないメーカーのものも多く存在しますし簡単に入手できてしまいます。

電子部品業界に詳しい方ならば実際にフラッシュメモリを製造しているメーカーは数社にすぎず、数多くある販売メーカーは製造メーカーから中身を購入してパッケージングしているとご存じかとは思います。しかしたとえ製造するメーカーが数社であっても納入先の要求にあわせた価格と合致する品質基準が存在するので、スペックが同じでも厳密に中身が同じということはありません

そしてその違いが最終的にメーカー別の品質、いわゆる壊れやすさやその症状の偏りとなって表れてくるのではないかと予想できます。

■極論すれば「運」ですが

どんなに信頼性の高いメーカーだろうが、どんなに聞いたことないメーカーであろうが、利用者個人としては不具合にあうかどうか(=初期不良品や潜在的不良品にあうか)は運しだい。

100%大丈夫なんてことはどんな高信頼メーカーでもあり得ないわけです。

とは言え、100個中1個の不良品が混ざっている棚から商品を取りたいか100個中50個の不良品が混ざっている棚から商品を取りたいか、という違いにはなってきますから、ご自身の運にぜったいの自信があればどちらから選んでも良いですがそんな強靭な運ならもっと他のことに使いたいですよね

ですので購入する際にはどこのものを買うか(メーカーの選別)どこから買うか(販売店の選別)いくらで買うか(激安処分品でないものを選別)というのは大切だと思うわけです。

※とはいえ、ウチは商売あがったりな状態になっちゃいますがね…

■こまめなバックアップコピーは必須

前段でも書きましたが、どんなに信頼性に期待できるメーカーの製品であっても壊れる時は壊れるもの。さらには使えば使うほど操作ミスや機材アクシデントで内容が化けてしまうなんてこともあるのがSDカードの世界。

ですからバックアップコピーはこまめに取っておいた方が良いのは言うまでもありません。

このバックアップコピーですが、特に難しいアプリケーションや操作方法を指す言葉ではなくて、単純にほかの記録媒体にコピーしておくだけです。

むしろ気をつけないといけないのは「コピー」のつもりで「移動」操作をしてしまうことです。この「移動」は以前はカット&ペースト(=切り取り&貼り付け)と表現されていたように移動元のデータを削除してしまう操作になります。

最終的にはコピーが取れたらSDカード内は空っぽにしたいという意図の方も多いと思いますが、意外にも「移動」操作はトラブルの温床であって、ちゃんと移動が完了しないままプロセスが完了したように振る舞ってしまうことがしばしば。

こうなると、コピーしたはずの媒体には正常にコピーできていなくて、なおかつ移動元も自動的に消えてしまっているのでお手上げということになってしまったご依頼が後を絶えません。

ほんのひと手間を惜しまず、コピーが完了したことを確認してから元を削除しましょう

■復元ソフトが破壊を進めることも

ここからは余談ですが、SDカードなどが壊れたらできれば「自分で」「安価に」直したいという方は多いですよね?

ところが復元事業者として日々いろんな状態のメモリ状態を見ていると、復元ソフトを試したがゆえに復元できなくなっているものも目の当たりにするわけなのです。

ある程度以上パソコンなどでのストレージ操作に精通されている方であれば「ソース」「デスティネーション」と聞いても自然と対象を判断できるのですが、そうでない方だとたとえ普段のパソコン操作に慣れていたとしても聞き馴染みがない言葉ですよね

ところがこれ、実は検査対象と保存先を表すとても重要なシーンで使われている場合が多くて、指定を間違えると無意味なデータで復元したい対象メモリを盛大に上書きしてしまいます

そのほかにも、WindowsだとCドライブとかDドライブとかいった言葉でストレージを区別しますが、これもWindowsという狭い世界に限定された話。いくつもつながっているストレージ(=ドライブ)を区別する言葉はたとえば/dev/sdaなんて感じで表されるほうが多いですし、/physicaldevice〜〜とかいった表示で判別するひともいるかもしれませんが、これらも同様に指定を間違えると取り返しがつかない状況にあっという間に陥ります

■さらには利用者の誤解による上書きも少なくない

そしてさらに最近増えている質問が「フォーマットをしてマウントできるようにすれば復元しやすくなる?」という恐ろしい誤解。そりゃ「フォーマットが必要です」なんていきなり表示されたらフォーマットしたくもなりますわな。
それに、たしかに一部の能力が低いソフトではOS管理下で動作するように組まれているのでマウントできないとそもそも動作できない事からこういった誤解が生まれてくるのかと予想します。しかしそもそもOS管理下で動作するということはそれだけOSの影響を受けてしまうわけですから純粋に高精度の復元など期待できません

復元できないだけならまだしも復元ソフトには外部計測値や経験則などが反映されず単純にプログラムされた通りにしか動作しないわけですから、物理不良領域が含まれているものにもドカドカと土足でアクセスしようと踏み込んでしまいますこれが致命的に物理不良を進めてしまう原因になることもしばしば。

ほんとにメモリにダメージを与えずに安全に復元しようとするならば、外部から応答速度やその波形など逐一反応を計測しながら慎重に行わないといけないのですが、それはソフトだけでは困難でハードウェアとの組み合わせは必須になってきます。

■上書きは確実に復元不可能な領域を拡げます

動画データ満載のようなシビアコンディションでない限り少しの上書きでは復元率はさほど低下しません。が、しかし、それを繰り返せば繰り返すほど確実に復元できたはずのメモリ領域をかきまわしてしまうこととなり、そのあとでいかなる機材を用いようがフラッシュメモリである以上は復元できなくなる割合がどんどん拡大し続けます

余談が3ブロックとずいぶんと長くなってしまいましたが、より安全なデータ復元のためにはぜひわたくし共にご用命いただければと考えます。


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