写真

私は写真が苦手なのはレンズを見ていると吸い込まれそうになるから。
写真は苦手だと公言しています。

なのに、会うたびに写真を撮ってくる青年が2人います。

ある日はマーガレットを持たされたり、
またある日は高架下で林檎を持たされたり。

一眼レフのレンズ越しに彼は言う。「写真嫌いは治りましたか」と。

とある青年は、私が彗星という曲に出てくる女の子に似ているからという理由で映像作品を作りたいと言う。だけど私は撮られるのがどうも苦手だ。やっぱりレンズを見ていると吸い込まれそうになるから。

「魂を抜かれてしまうから」って冗談交じりに答えていつも逃げる。
それから連絡を取らなくなったカメラ小僧は元気にしているのかな。
毎年誕生日に律儀に連絡をくれる青年だったけれど、アドレスを変えてしまってから数年が経ってしまいました。

青年の口癖は「あなたがどこか遠くへ行ってしまいそうで怖い」でした。

私は、どう考えたって写真映えするような人間ではないのに。
どこか遠くへ行ってしまいそうでも、どこにも行けない人間なのに。