【読書日誌】かもめホテルでまず一服


「リスボン」という文字が目に入った、購入理由はそれだけです。
「かもめホテルでまず一服」関川夏央(双葉文庫)です。

短編のノンフィクションの旅の話。一つの話はほんの数ページで、舞台はポルトガルだったり、フィリピンだったり、新潟だったり、メキシコだったり、新宿だったり、中国だったり。

旅をしているような気分にさせられる一冊でした。こんな風に世界をふらりと回れたらどれだけいいだろうか。私の知らない時代、私の知らない世界。

そして、言葉のセンスが好きでした。

タバコの味が、Goût de l’espoir、希望の味。タバコを希望の味だなんて思いもしませんでした。

血統書つきの番犬よりは首輪のない猟犬でいたい、正しくそんな気分で。私だってそうありたい。

国境の南の淡い記憶という語感も素敵だし、本の中の会話から、カミュの「ペスト」を読みたくなったり。

読んでいて思ったのは、お酒と旅は相性がいい気がする。

旅行欲が少し満たされる一冊です。そしてお酒が恋しくなる。クラシックを聴きながら旅への憧れに浸りました。

この文章を締めくくるのに、イヤホンから聞こえるのがリストの愛の夢というのはとてもふさわしい。19年前に初めて聴いて大好きになった曲だから。