SDカードやUSBメモリって自然消失するんです

大昔の話じゃないですよ、いま現在流通しているSDカードやUSBメモリ(ついでに安価に流通しだしたSSDまで含めて)のほうがメモリ蒸発といわれる症状は起こりやすくなっている傾向があります。

・情報はどう記憶されているか

そもそもどうやって情報を記録しているかというところなんですが、一般的にSDカードのような記録媒体は書き込んだ情報を内部セルに電子として蓄えています。

記憶用のセルは紙コップみたいなものだと思ってください。

空っぽのままだとなにも記憶していない状態ですので、ここに電子の代わりに水を注ぎ込むことにします。

注ぎ込んだ水(=電子)でコップが満たされた状態がデータを記憶している状態です。

しかし困ったことに、紙コップみたいなものなので年月が経過するとともに中の水が染み出して自然に無くなっていってしまいます。これが、メモリ蒸発するといわれる現象につながります。

ときどき「バッテリーが無くなるようなもの」と表現されることがありますが、それだとまるでパソコンやスマホなどに接続しているだけで充電できるんじゃないかという誤解を生んでしまうことになります。

現実にはSDカードやUSBメモリでは単純にパソコンに接続しているだけで再充電されることはありません。あくまでもデータをメモリに書き込んだ時点からの年月の経過が大きな要素になるのです。

・蒸発するとどんな症状になるか

さて、先ほどは紙コップ1つの図で表しましたが実際にはこの紙コップ1つではわずか1ビットの情報しか記憶できません(SLCの場合)。そのため実際のメモリチップの中ではこのような器がいくつも連なってはじめて1つのデータを表すことになります。

こんな感じですね。

たとえば1GBの容量のメモリであれば紙コップ状のものが内部に8,589.934,592個(かりに器1つで4ビットを表すQLCを想定しても2,147,483,648個)が作り込まれていることになります。

そんなにたくさんの紙コップが小さいチップの中に作り込まれているわけですから、当然ながら均一の品質でないものも混ざっています

たくさんの紙コップの中のほんの少しでも蒸発が起きやすいコップが含まれていたとすると、その部分に記録されていた情報が比較的早く消失してしまうことになります。

たとえば写真データだと最低でも1MB(コップ1,048,576個分)くらいのファイルになりますが、それだけの量がごっそりと消えてなくなることよりも部分的に抜けてしまって全体が崩れてしまうといった壊れ方として現れる機会は非常に多く寄せられます。

・大容量になればなるほど

膨大な数の紙コップが作り込まれている様子を想像できた方ならば、その一歩先も想像しやすいかもしれません。

昨今ではSDカードやUSBメモリが大容量化して、しかも安価になっているのでついつい必要以上の大容量品を買ってしまいがちだと思います。

ですが、大容量だからといってSDカードが大型化するわけではなく、あくまでも同じ面積のなかに小さく小さく紙コップを作っていくイメージになります。

するとどうでしょう、コップ1つあたりがどんどん小さくなりますよね、小さいコップには少しの量しか水が入りません。そのため抜けはじめるとすぐに無くなってしまいます。

もちろんメーカー側は設計製造の微細化で従来程度を維持していると公言はしますが、物理的に考えれば余力が無くなっていくのは簡単に想像ができるというものです。

・ほかに見られる症状は?

前述の例では写真1枚でしたが、たとえば動画データが記録されていた領域で蒸発が起き始めると再生中にブロックノイズだらけになったり、あまりに消失部分が多くなってくると再生不能になったりもします。

また、運悪くファイル管理用の情報を記憶している領域で蒸発が起きると何を記録していたかわからなくなってしまうため「フォーマットしてください」といったメッセージがある日とつぜん現れたりもします。

これらの症状は実際にはある日とつぜん悪くなったわけではなく、それ以前から時間をかけて徐々に徐々にあちこちの情報が消失していった結果だと考えたほうが良いことがほとんどです。

そのような悲しいトラブルに遭遇しないためにも、SDカードやUSBメモリに長期間データを置いたままにせずHDDやDVD・BDディスクなどにコピー保存をこまめに行うことをおすすめしています。


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SDカードは2~3年で蒸発しはじめます

なんのこっちゃ、というタイトルは日本語としての正確さには欠けますね。

ちゃんと補間するならば「SDカードに記録したデータは時間の経過とともに蒸発しはじめてしまいます」というところでしょうか。これでもまだ不親切な言葉の並びではありますが。

■蒸発=製品の寿命ではない

まずデータの蒸発とはなんぞや?という重要な点ですけれど、これはSDカードに限らずUSBメモリやSSD、あるいはスマホ本体メモリ(スペック上はROMなどと表現される部分)など多種多様な製品に使用されているフラッシュメモリの本来の特性がそうさせています。

ときどき、ネット界隈ではこのことを書き換え寿命と混同されているような説明が見られますが、根本的に書き換え寿命や製品寿命とは関係ない要素となります。

■寿命とはなにか

遠回りな説明になりますが、まず寿命と呼ばれるのは「書込みできなくなる」あるいは「書き込んだデータをすぐ保持できなくなる」ことが症状として現れます。

一般的にフラッシュメモリではフローティングゲートの場合にはデータを書き込む際にトンネル酸化膜の劣化が物理的に生じることから、書き換え回数によって徐々に壊れていく構造ともイメージできます。(チャージトラップの場合には原理的には改善されているようですが)

この物理的な寿命に到達すると、書き込みたいデータが正常に書き込まれない、あるいは書き込んだデータを正常に保持できないという状態になることから完全に使用不可能になります(=書き換え寿命=製品としての寿命)

■SDカードの蒸発とはなにか

話しを戻し、蒸発というのはどういう状態かと言うと「記録していたデータが勝手に消失している状態」を言い表しています。

ただし現実にはカード内の情報がすべて完全に消えてしまっている状態を経験するよりも「部分的に消えている=壊れている状態」を経験することのほうがはるかに多いのではないかと思います。

目の当たりにする症状としては「写真が半分ベタ塗りになっている」「動画のノイズが酷くなっている」「ファイル名が崩れている」「フォーマットを促される」といったものとして現れる事が多いように思われます。

もちろん前述のような症状はデータ蒸発以外の要因によっても引き起こされますから、症状だけで原因を特定することは難しいのですが。

■なぜ蒸発が発生するのか

この蒸発の原因についてよく言われる原因としては、フローティングゲート方式の場合にはトンネル酸化膜の劣化によって電子が漏れ出してしまったり他のフローティングゲートに電子が流れてしまう点があり、チャージトラップ方式の場合には高温になると保持している情報が壊れやすいという点が一因とされています。

しかしそれ以外にも回路形成時のごくわずかな不具合が引き金となるケースも考えられるので、けっして長期間使用して劣化しているから、とか、高温環境に放置したから、という点ばかりが原因とも言い切れないようです。

■どのくらいの期間で発生する

利用者視点でもっとも気になることと言えば、データの蒸発症状はいったどのくらいの期間で発生するのか、ということになるでしょう。

経験則から言うと数年の範囲、もう少し具体的に書くならば2~3年の範囲で発生し始めると考えておいたほうが良いと思われます。

データ保持期限に関連するような要素は設計世代にも大きく絡む話しになり、10年や20年ほど前に設計・製造されていた商品のほうが今よりもはるかに長い期間データを保持できる実力があったものと考えられ、実際に私共の実験室で保管されている個体についても古いものほど優秀な成績を出す傾向があります。

ですが、その実力があるはずの昔の世代のもの(2GB以下の容量のSDカードやUSBメモリ)についても弊社に寄せられる割合が徐々に増えているようにも見られますので、いくら長期間のデータ保持実力があっても限界というものは必ず訪れるものだと理解いただければと考えます。

■さらに困ったことも

前述までは記憶原理的な要素だったのですが、さらに困ったことにSDカードやUSBメモリの大容量低価格化の弊害でとても品質の悪い製品や容量偽装品といったものまで少なからず流通するようになってしまいました。

これらも、使用開始当初から使えないというレベルのものはそうそう当たらないのですが、使いはじめてからごく短期間(数日から数ヶ月ほど)でなんらかの不具合が露見してしまうことがあります。

容量偽装など本来記憶できるはずのない容量付近までデータを書き込んだ際に突如としてそれまで記録してあったデータがすべて壊れてしまったり、記録できたはずのデータがいつの間にか消えていたり、場合によっては二度とカードが反応しなくなったりと様々な症状で寄せられるケースを拝見していますから、安価で良い銘柄のものが手に入ったと喜んでいて短期間で痛い目にあってしまうという事の無いようにくれぐれも購入先や極端に安価なものには手を出さないなど自衛策を張り巡らせていただきたいところです。

■注意しておくことは

SDカードでもUSBメモリでも、フラッシュメモリという記録媒体を使用している以上はかならずデータが消えてしまうものだということを知っておいていただきたいです。

もちろん他の媒体、たとえばDVD-RやHDDでも読み取り不能となるような不具合は発生するものなのですが、とくにフラッシュメモリ媒体においてはその発生頻度が高く、また大容量化に伴ってデータを保持できる期間も相対的に短くなる傾向にあります(メーカーサイドではあくまでも一般的な使用期間に影響を及ぼさない範囲で改良しているという言い方ではありますが)

SDカードやUSBメモリはあくまでもデータの一時蓄積場所であって、機器間でデータを手軽に持ち運ぶための手段の1つとして設計されているものです。そのため長期間データを記録したままにするという使い方は本来想定されておりません

そのため利用者としては必ずSDカードやUSBメモリにたいせつなデータを置きっぱなしにせず、たとえばカメラで撮影に使用したSDカードであればなるべく早い段階でHDDやDVDなどほかの媒体へとコピーをとる習慣をつけておくことが今のこの時代においても大切なこととなります。

壊れ始めたと認識した早い段階であれば弊社の復元過程で対処も可能ですが、壊れかかっているカードをパソコンやカメラに接続しつづけたり、データを追記したり、復元ソフトを試したりとあれこれ手を出しているうちに対処不可能となってしまう事例も少なくありませんからくれぐれもご注意いただければと考えます。

※メーカーサイドではデータ保持寿命と表現されていますが、この文中では異なる2つの指標で「寿命」という言葉が重複し混乱することを避けるためあえて「期限」と表現しています。

※別途注記がある箇所を除きすべてNANDフラッシュメモリを前提に記載しております。製品形状の代表例という意味合いでSDカードやUSBメモリと表記しておりますがもちろんその他XQDやSSDなども同様です。


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64GB USBメモリの容量が32GBと表示される理由

USBメモリの中身
USBメモリの中身はこんな感じ

■USBメモリに限った話ではないけれど

タイトルのような症状はなにもUSBメモリに限った話ではなくて、SD/microSDカードでもよく目にする症状です。

さらに付け加えるならば、64GBに限らず例えば以下のように
128GB のはずが 64GB に
32GB のはずが 16GB に
16GB のはずが 8GB に
8GB のはずが 4GB に
4GB のはずが 2GB に

といった感じで、本来あるべき容量の半分程度しか認識されないというのは実はずいぶん昔からよく見かける症状の1つです。

■ソフト的な要因?

まずこの症状をみてソフト的に詳しい人であればパーティーション分割されていることを疑ったり、FAT32などのようにフォーマット形式が原因ではないかと疑ったりします。

たとえばWindowsをお使いの方ならば、まっさきに設定からディスクの管理を開いてみるというのが手慣れた方々の初動ではないでしょうか?

ディスクの管理画面
手慣れた方は見慣れているであろう画面ですが…

ですが、開いてみても期待したような「未割り当て」な領域が見当たらず、原因がわからない状態に陥ってしまうということも少なくないと思います。

■ハード的な要因?

ウチの会社のような、なんらかのトラブルが発症したSDカードやUSBメモリを日常的に扱う人というのはさほど数は多くはないかもしれませんが、現実によく寄せられてきます。

ハード的な要因の場合、使用者の手元で認知されている症状としては、

「フォーマットを促される」
「突然すべてのデータが消えた」
「カードエラーと表示される」

といった、カード破損の典型的な症状のどれか(あるいは複数)が現れるか、あるいは冒頭のように

「使っていないはずなのに空き容量が半分しか無い」

といった症状として現れていることもあります。

■実は昔からよくある症状

職業柄どうしてもバイアスがかかっているかもしれませんが、経験上はソフト的要因であることは希でありハード的な要因がほとんどではないかと思われます。

実際のところ、ソフト的に症状を再現することは非常に簡単でありそれこそストレージのパーティーションを壊すなり修正するなり手を加えることで実際の半分の容量を使えなくするということはできます。(その場合には半分に限らず任意の容量にも調整できてしまいますが)

しかしこのような操作は手順も長く複雑であり、偶発的に起こるということは考えにくいというのが現実ではないでしょうか。

■ハード要因の場合には修復は不可能

ハード要因の場合にはもとの容量に戻すことは基本的にできません。

内部的に半分のメモリ容量が接続できない状態になっているため、ソフト的にいくら探そうとしても接続されていないメモリを探してアクセスすることはできないのです。

原因として考えられることは基板上での接続が劣化や衝撃などの要因で途切れてしまうことと考えられますが、この途切れてしまう場所は様々で、基板上に複数実装されたフラッシュメモリへの配線だったり、ワンチップ化された内部でコントローラが内部リークなどで壊れてしまったり、フラッシュメモリそのものが部分的に壊れてしまったりといったこともあるのでしょう。

ファイルダンプイメージ
こういったダンプも手練れの皆さんは見慣れていると思いますが

アクセス可能な領域のメモリダンプを見てみると、上位ビットや下位ビットがまるごと欠落しているような値ばかりが出てくることもありますし、そうではなく半分のアドレスしか応答してくれなかったり、あるいはアドレス指定に対して応答があっても期待した領域ではなく繰り返し同じメモリ領域の値が出てくる(これは容量偽装にもよく活用される仕組みでもあります)なんてこともありますから同じ現象でも原因部分を特定するのは困難を極めることになります。

■その時代その時期の大容量品に多い

このようなトラブルはその時代その時期ごとにベースになる容量は異なるものの、いつも同じようなパターンで傾向的に表れてきています。

16GBがハイエンドと言われた時代にもよく見ましたし、32GBが出始めたころにもよく見ましたし、64GBが一般化してくる段階でもよく見ましたし、いまや128GBや256GBにとどまらず512GBや1TBなんてフラッシュメモリ製品も市販されていますが、これらの容量の半分しか使えなくなったなんてことも当然ながらあります。

かつてのハイエンドも年月が経ち生産工程がこなれてきて普及品扱いになった時点でパタッとみかけなくなるんですけどね。これを書いているタイミングだと16GBや32GBでこのような症状を見かけることはかなり少なくなってきました(ただし古い生産ロットのものを使っている方もいらっしゃいますから皆無というわけではないですが)。

くれぐれもUSBメモリやSDカードなどを購入されるときは消耗品であるという認識をしていただき、過剰に大容量のものを選ぶのではなく、その時必要な容量のものを買うように心がけることを強くおすすめしております。


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